困ったな。困ったな。困ったな。困ったな
やれやれ、君ってやつは。
どうしたんだい?
聞いてくださいよ、オオハシさん!
先日の事故の報告資料をインシデント報告会に持って行ったんですよ。
そしたら、やり直しをくらっちゃって…!
やれやれ。理由は何だったんだい?
どこから話せばいいか分からないんですけど…
大方、関係者への説明や、事前に必要な情報入力が不足していたんだろ?
すごい!なんで分かるんですか!?
さらに、現場のカスタマーセンターのお姉様方からも、
めっちゃ嫌味を言われる始末だったんじゃないかい?
なんでわかるんですかーー!?エスパーですか!?
エスパーじゃなくても分かるさ。
大抵の人は、初めてのインシデント報告会でそうなるんだよ。
ええ〜、そうなんですかー?
じゃあ僕、悪くないじゃないですかーーー!
……。
……ちょっとは悪いところ、ありましたかね?
誰が悪いかという話や、業務の根本的な改善という大きなテーマも確かに重要だが、
今回はひとまず置いておこう。
悪いやつは見つけて徹底的にぶちのめしてやりたいですけどね
気持ちはわかるが。。。
それよりも、君が今後こういう困難をどう乗り越えるか。
そこが一番大事だと思うよ。
確かに。。そうかも
そうですね、そうです!
僕が困難を乗り越えられるのが大事です!それ以外は大事じゃない!
……。
……それ以外も大事かもしれませんが、今は大事じゃないです。
まあ、いいさ。今日もPMBOKのツールで解決策を考えてみよう。
出たーー!好きですねー、オオハシさん。
……。
続けてください……。
いいえ。全く。そんな話しました?僕に?オオハシさんが?全然
だろうね。
まあ、気にせず。続きをどうぞ!
まずは基本から確認しよう。君は“ステークホルダー”って言葉を正しく覚えているかい?
よく分かりません!
“ステークホルダー”とは、プロジェクトに影響を与えたり、影響を受けたりする可能性のある人や組織のことを言うんだ。
うわっ、難しそう…。具体的には誰なんですか?
今回の事故報告の件で言えば、
報告会の出席者、
現場のカスタマーセンターの担当者たち、
もちろん君自身も含めて、全員が“ステークホルダー”なんだ。
さらに言えば、サービス利用のお客様や人事や法務の方、
インフラの方は広報の方など、
見えないところで多くの人が関わっている可能性がある。
まるで、水面に落とした石の波紋がどこまでも続きわからなくなるくらい
関係者は広いんだ。それが全てステークホルダーなんだよ
なるほどー。そういう人たちをちゃんと見えてなかったのかも…
そうだ。だからこそ、まず“ステークホルダーを可視化する”ことが必要なんだよ。
でも、どうやって“可視化”なんてするんですか?
そのために“ステークホルダー分析マトリクス”というツールがある。聞いたことは?
当然ありません!
これは、ステークホルダーを“権力(Power)”と“関心度(Interest)”の2軸でマッピングして、適切な対応を考えるためのマトリクスだ。
それも難しそう…。もっと分かりやすく教えてください!
試しに書いてみよう
ステークホルダー分析マトリクス
権力 (Power) |
関心度(Interest) |
| 低い |
高い |
| 高い |
セキュリティ本部長 (権力:9, 関心度:3)
プロダクト本部長 (権力:9, 関心度:2)
コンプライアンス部門長 (権力:7, 関心度:3) インフラ部門部長 (権力:7, 関心度:4)
|
カスタマーセンターの責任者 (権力:8, 関心度:8)
メガネカイマン部長 (権力:7, 関心度:5)
|
| 低い |
人事部門 (権力:3, 関心度:2)
法務部門 (権力:3, 関心度:2)
|
セキュリティ部門部長 (権力:4, 関心度:6)
インシデント管理責任者 (権力:4, 関心度:5)
セキュリティ部門関係者 (権力:4, 関心度:5)
インフラの方(広報) (権力:5, 関心度:5)
君自身(インコ君) (権力:4, 関心度:5)
サービス利用のお客様 (権力:2, 関心度:6)
現場CS担当者達 (権力:3, 関心度:9)
|
たとえば、カスタマーセンターの責任者は“権力も関心度も高い”ステークホルダーだ。だから報告前に丁寧な説明をしておくべきだった。
そうだったのか。。
後は現場のカスターマーセンターの担当者達やサービス利用のお客様
社内での形式的な権力はないかもだけど、
実際にサービスを使ってくれたり
対応してくれたりする現場の人が
もっとも大事なステークホルダーだ
メガネカイマン部長のことしか考えてなかった。。。
そうだろ。
でも本当に大事なのは
お客様とそのお客様に向き合う現場の人が関心が高いんだ
だから、真っ先にそして一番丁寧に説明をしなければいけないステークホルダーなんだ
反省です。。
でそうすればいいんですか?
そこで“ステークホルダー・エンゲージメント・マネジメント”という考え方がある。
教えてください!
これは、ステークホルダーと良好な関係を築いて、プロジェクトにうまく巻き込んでいくマネジメントのことだ。
うまく巻き込む、ですか?たとえば?
まず先ほどのマトリクス事の対応方法の図はこうだ
先ほどの話だとカスタマーセンターの責任者はどこに該当していた?
えーと、権力も、関心も高いので。。。
あ、「綿密に対応」ですかね?
そうだ。
だから、今回のような報告があると分かった時点で、
カスタマーセンター責任者に事前対面で共有して、意見を聞くようにすればよかった。
それで“あ、この子はちゃんとやってるな”って印象になる。
なるほど
さらに、カスタマーセンター責任者は、自部門の部下のカスタマーセンターの現場にも情報を提供したり、
うまくいくとヒアリングの場も設定してくれる。
そうなったらどうなる?
カスターマーセンターのお姉様方への「情報の提供」が出来る!
そうだ。組織は権力バランスでできている。
また関心がある人ほど反対意見や賛成意見をくれる。
その順番やバランスを考えながら
エンゲージメントをマネジメントして行くんだ
なるほど…先に味方にしとけば、怒られずに済むんですね。
さて、最後に紹介したいのが“ステークホルダー・エンゲージメント・コントロール”だ。
コントロール…ですか?なんか怖そうな名前ですね。
ふふ、怖がることはないよ。これはね、“ステークホルダーの関与が、計画通りに進んでいるかどうか”をモニタリングし、必要に応じて対応を調整することなんだ。
関与って…たとえば、さっきのマトリクスで“重要な人”として扱ってた人が、急に反対してきたりするのも見張っておくってことですか?
その通り。そして、もし関与レベルに変化があったら、関係性を修復したり、情報提供の方法を変えたり、働きかけ方を見直したりする必要がある。
む、難しそうだけど…実際にはどんな風にやるんですか?
今回のケースで言うと例えば、
報告会に出席しているセキュリティ本部長さんはあまり関心がなさそうだが、
今回のインシデントがセキュリティインシデントの可能性が判明すると
一気に関心度が上がる!
ヒイイ!
関与レベルの変化というのは状況に応じて刻々と変わるんだ
ああ…そういうのあったかも…
それはまさに“エンゲージメント・コントロール”の出番だな。フォローアップのメールを入れたり、“今後の報告内容でご意見ありませんか?”と声をかけるだけでも、状況は変わるかもしれないよ。
なるほど…ステークホルダーって、単に“関係者”ってだけじゃなくて、生き物みたいに“変化する存在”なんですね。
いい観察眼だ。そのとおり。だから、最初に可視化して終わり、ではなくて、継続的に観察し、関係性を調整し続ける。それがプロジェクトマネジメントの大切なポイントなんだよ。
いや〜〜〜今日も勉強になりました!それにしてもPMBOKって、マトリクスとかマネジメントとか、カタカナばっかりですね!
そうだね。でも、“相手の立場に立って考える”という根本の姿勢は、カタカナじゃなくても、すべての仕事に通じることだよ。
……あ、なんかちょっとカッコイイ…!
やれやれ
ステークホルダーマネジメントについて
インコ君はまたオオハシさんにPMBOKのステークホルダーマネジメントを教えてもらってましたね。このサイトで何度もステークホルダーマネジメントを扱いますが、
それは、それほど、このマネジメントが重要かつ実用的だとサイト管理者が考えているからです。
それでは、
一般的なステークホルダーマネジメントの項目をおさらいしましょう。
ステークホルダーマネジメントの4つのプロセス
PMBOK(第6版)では、ステークホルダーマネジメントに関して次の4つのプロセスが定義されています。
1. ステークホルダーの特定(Identify Stakeholders)
- プロジェクトに影響を与える、または影響を受ける人々を洗い出す。
- 利害関係や期待を把握し、記録する。
- ツール:ステークホルダー登録簿の作成。
2. ステークホルダー・エンゲージメントの計画(Plan Stakeholder Engagement)
- ステークホルダーの関与方法を計画する。
- どのような情報を、誰に、どのタイミングで伝えるかを決定。
- 関係性に応じた戦略的アプローチが必要。
3. ステークホルダー・エンゲージメントのマネジメント(Manage Stakeholder Engagement)
- 計画に基づき、実際にステークホルダーとコミュニケーションをとる。
- 懸念への対応、協力の取り付け、関係の維持がカギ。
4. ステークホルダー・エンゲージメントの監視(Monitor Stakeholder Engagement)
- ステークホルダーとの関与状況を継続的に監視。
- 必要に応じて計画を調整し、問題を未然に防ぐ。
まとめ
ステークホルダーマネジメントは、単なる「お付き合い」ではなく、プロジェクトを成功に導くための戦略的な活動です。
プロジェクトマネージャーに求められるのは、相手の立場や感情を読み取り、信頼を築きながら最終目標へと導く力になります。
プロジェクトマネージャーに求められるスキルはやることが一杯ですが、
またインコ君と一緒に学んでいきましょう。
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